芸術療法のすすめ
わたしたちが幼いころ経験した「お絵かき」、「粘土遊び」、「砂遊び」といった創作活動には、こころの成長や発達をうながす重要な意味があります。最近では大人向けのぬり絵が注目され、書店にはたくさんの関連本が置いてあります。ちなみに、人が絵を描くようになった歴史は古く、古代人の壁画も残されています。そのころから、人は絵を描くこと、表現することに一種の癒しを求めていたのではないかといわれています。こどものものだと思われていたぬり絵に大人が夢中になるのは、その創作活動がセラピー効果を生み、リラックスしてストレスが軽減される効果が期待されるためだと考えられています。
芸術療法とは、このような効果を活かした心理療法です。自由に絵を描いたり、絵や写真の切り抜きを素材として貼り付けて1つの作品を作ることで、心の中にある葛藤や悩みを表現し、抑圧されていたり、傷ついたりしていたこころを解放しようというものです。創作活動は、私たちの中の美に対する内的欲求を満たし、幸せな気分にさせてくれます。
自分が今何をどう感じているのか言葉にできますか?自分自身のことは案外、自分だけではわからないものですが、芸術療法にはそれが象徴的に表れることがあります。芸術療法で大切なのは治療者が作品を評価・解釈をすることではなく、作品を作る本人が作品内に表現された自分の心身の状態に気づくことです。言葉でコミュニケーションをとるのが苦手な方にも、芸術療法は有効な治療手段となっています。
当院で行う芸術療法には、絵画療法、コラージュ療法、風景構成法、スクウィグル、紙粘土などがあります。臨床心理士により、カウンセリングと併行して行うこともできます。また、ソンディテストやバウムテストなどの心理検査を用いることでより客観的な評価が得られます。