長崎の心療内科 もとやま心のクリニック コラム「LOUNGE-7月号」睡眠負債

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コラム「LOUNGE-7月号」睡眠負債

(2018年7月2日掲載)

 梅雨に入り、湿気と暑さで寝苦しい夜が出ていないでしょうか。日本では多くの人が睡眠の問題を抱えており、その割合は20%〜45%に及ぶと報告されています。睡眠の問題に関しては、まず適切な睡眠時間の確保と、睡眠呼吸障害をはじめとする専門的治療を要する睡眠障害のアプローチを行ったうえで、睡眠薬を用いた薬物治療もしくは非薬物的アプローチを行うことが望ましいと考えられています。
日本人の睡眠時間は年々減少しており、NHKの国民生活時間調査によると、1960年には8時間13分だった日本人全体の睡眠時間は、2010年には7時間14分と、この50年で約1時間短くなっています。1960年には60%以上の人が22時までに床に就いていましたが、2010年にはその割合は24%減少しており、多くの日本人は「夜更かし・睡眠不足」の状態かもしれません。

 この頃は平日の睡眠不足の蓄積を睡眠の借金、睡眠負債と呼ぶそうです。この睡眠不足を解消するために週末に睡眠時間を多めにとるのは決して悪いことではありません。しかし、5日連続でためた睡眠負債を週末2日で完全に返済することはできません。必ず睡眠負債は残ってしまいます。睡眠負債を生じさせないためには、平日の睡眠時間をきちんと確保するしかありませんが、それが難しい場合でもたとえば週半ばの水曜日は必ず睡眠時間を確保するなどして、睡眠の借金がたまらないようこまめに返していくことが大事です。どうしても土曜日はたっぷり寝てしまうという人でも日曜日の朝寝坊と昼寝は最少減におさえるようにしたほうがよいでしょう。

 昼間の眠気はだいたい30〜40分すれば過ぎ去ることも少なくありません。昼間の活動に支障がないのであればどうにか眠気をやり過ごして夜の睡眠のためにとっておきましょう。そのほうが日曜日の睡眠の質が高まり、1週間のスタートがよりスムーズに切れるようになります。それでも週末はもっと眠りたいという人は起床時間を遅らせるだけでなく普段より早めの就床を試してみるのも手です。普段より早めに寝るのは体内時計の性質上難しいのですが、実際にかなりの睡眠負債がある場合には、普段より早めの入眠も可能になります。週末せっかく早めに起きたとしても、自分の部屋で過ごしてばかりでは上手く光を取り入れることができません。朝の光の刺激は体内時計のリセット、覚醒効果があるので、朝起きたらしばらくは明るい部屋で過ごすようにしましょう。散歩でもできれば、太陽の光と運動の両方の刺激を受けられるので、理想的です。

 しっかり寝ても日中に強い眠気を感じて仕事や生活に支障のあるとき、睡眠中のはげしいいびきや呼吸停止を指摘されている方、寝る前の安静時に下肢がむずむずするなどの強い不快感が出現する、睡眠薬を飲もうと考えている時、そういった場合には睡眠医療の専門医を受診されることをお勧めします。最寄りの睡眠医療認定医は睡眠学会のホームページで探すことができます。皆様の睡眠がより良いものになると幸いです。

(心理Aya.T 記)

―待合室で読める本から―

「あがり症はなぜ治せるようになったのか ―社会不安障害(SAD)がよくわかる本」  現代書林  木村 昌幹著
専門医による薬物治療を含めたあがり症の治療について詳述しています。病気を理解し、治るということについての医学的理解が得られ、自信がもてる内容となっています。
「やさしくあがり症を治す本」  すばる舎  鳥谷 朝代著
あがり症で長い間苦しみ、そこから脱却した著者が、自分の経験を元にあがり症克服の手順をわかりやすく解説しています。
「一対一でも大勢でも人前であがらずに話す技法」  大和書房  森下 裕道著
人前で話すと緊張し、声や手が震えたりすることについて、様々なシチュエーションを想定し、大勢の前でも話せるようになるコツを身につけることの手助けになるかもしれません。
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