長崎の心療内科 もとやま心のクリニック コラム「LOUNGE-2月号」認知行動療法のすすめ

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面接室からのたより

コラム「LOUNGE-2月号」認知行動療法のすすめ

(2018年2月1日掲載)

 さて、この前はカウンセリングについてお話させていただきました。カウンセリングのような精神療法は、精神疾患の治療において、薬物治療と並ぶ重要な治療法の1つとなります。薬物治療がお薬を使って体内にはたらきかけるのに対し、精神療法はその人の内面にはたらきかける治療法となります。その精神療法の代表的なものの1つに「認知行動療法」があり、これは患者さんの間でも知られるようになってきました。認知行動療法は、認知(私たちの物事に対するとらえ方)を修正し、前向きになれる方法だと簡単に説明されがちですが、そうではなく、『今その人が置かれている現状をしっかりと見つめ、どうしたいのかを考え、現状をより良くするために工夫をすること』、それが認知行動療法の基本的な考え方となります。

 例えば、家に1人でいたとして、家の外で不審な物音がした時に、あなたはまず「なんの音だろう」と物音に対する不安や警戒心を抱くと思います。そして外をのぞいて、そこに何もなければ風の音だったのかも、と安心して部屋に戻るでしょうし、知っている人がそこにいたら家にあげるかもしれません。そこに不審者がいたら、警察に電話をするでしょう。私たちはその場の状況を判断し、その後の行動や考え方をその状況に応じて変えることができます。しかし、外で物音がした時に「誰か素敵な人が来たのかも」とまず最初に思うのは冷静とはいえない考え方で、それであっさり扉を開けると危険なことになるかもしれません。ものごとに対するネガティブな感情は自分自身を守る感情であり、不安感や恐怖感を前向きに変えるといった認知の修正が必ずしも現実的な対応とは言えないこと、その場に応じた適切な対処方法を見つけることが大事だということがこの例で伝わると幸いです。

 人は、通常冷静な判断ができるものですが、うつ状態にあったり、不安・緊張の強い状態にあると物事を冷静に見つめることが難しくなります。そうなると適切な対処方法も見つけられなくなり、苦しくなる一方です。認知行動療法は、今の現状を冷静に見つめ、その中で実行可能な対処方法の幅を広げ、治療者はそのコーチとなります。自分でできる方法もあり、近頃は関連本も多く出版されているので、その本を元に自分で実施する方法、インターネットにある有料のものを使う方法などがあります。興味のある方は、参考にされては如何でしょうか。

(心理Aya.T 記)

―待合室で読める本から―

「『いつも誰かに振り回される』が一瞬で変わる方法」  大嶋 信頼著  すばる舎
本書では他人のことを気にして「振り回されている」状態がなぜ起こるのか、「脳の仕組み」の観点から説明し、「暗示」によって解決していきます。心に静けさが戻り、「本当の自由」が手に入るかもしれません。
「『いつもの不安』を解消するためのお守りノート」  勝 久寿著  永岡書店
本書では、様々な不安を解消し、なりたい自分になるための方法を解説しています。自分でできる心理療法を実践することで、生きやすくなるヒントがあります。
「ぼくは社会不安障害」  伊藤 やす著  彩図社
会議や発表の何日も前から不安でしかたない、人がいるところで電話を取るのが苦手、飲み会など人と食事をするときに極度に緊張するという、社会不安障害と向き合う著者本人が語る体験談です。
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