長崎の心療内科 もとやま心のクリニック コラム「LOUNGE-6月号」ストレスマネジメントについて

もとやま心のクリニック
長崎の心療内科もとやま心のクリニックへのお問い合わせ・ご予約は095-856-3033
トップページ > 面接室からのたより > コラム「LOUNGE-7月号」
面接室からのたより

コラム「LOUNGE-7月号」ストレスマネジメントについて

(2017年7月3日掲載)

 ストレスマネジメントとは、ストレスについてよく知り、ストレスをなくしたり、上手に使ったりすることです。ストレスとは「外圧に対して、身体が懸命に持ちこたえようとする防御反応」です。つまり、何かの刺激にたいし、身体や心が“どうにかしなければ”という状態になっていることです。例えば、暑い、まぶしい、空腹だというのはストレッサーであり、ストレス反応としては汗をかく、目をほそめる、おなかが鳴るということになります。ちなみに、ストレスの種類には、心理社会的(精神的)ストレス、内的・外的な身体的ストレスがあります。カナダの H.セリエのストレス理論の中心をなす概念があります。生体が外傷、中毒、寒冷、感染症のような非特異的なストレス刺激に遭遇すると、そのストレス刺激の種類とは無関係に一連の個体防衛反応が現れ、その主役は下垂体前葉・副腎皮質系のホルモンであるとし、この反応の総和を汎適応症候群と呼びました。反応は、(1) 警告反応期(2) 抵抗期(3) 疲憊 (ひはい) 期に分けられます。成因の明らかでなかった心臓血管系や腎臓,関節などの病気の成因は、この反応に関係が深いと言われています。

 一般に、ストレスや落ち込みを感じて生きるよりも、幸福を感じて生きるほうが、ずっと健康的で長生きすると考えられがちです。ストレスをなるべく抱えないようにして、前向きな心持ちでいることは、健康のために大切だと多くの人が口にしてきました。しかし、「ストレスを感じている」もしくは「幸せではない」と回答したある一定数の女性が、その後10年、幸せだと答えた女性に比べて、死亡率が高いわけではないことがわかりました。この研究結果から学べる大切なことは、ストレスを感じたり、後ろ向きになることを、それほど深刻に捉えるのではなく、たまには落ち込んだって問題ないということではないでしょうか。今日、ストレスは健康のあらゆる面において「弊害」とされ、常に前向きでいることが健全だと言わんばかりに、ポジティブシンキングが求められがちです。でも、ストレスを感じたり、落ち込んだりすることは、人間にとって自然な心理現象だと言えます。

 さて、ストレスコーピングとは、ストレッサーやストレス反応を何とかしようとするために起こす行動です。私たちは与えられた刺激に対して、なんらかの認知(評価・解釈)を加えます。そして、その認知のあり方によって私たちにはストレス反応が生じます。つまり同じ刺激を与えられてもその認知の仕方によってストレス反応に違いが生じるということです。そしてA)ストレッサーB)認知C)ストレス反応のそれぞれの構成要素に自覚的に対処することをストレスコーピングと呼びます。ストレスコーピングは現代社会に生きる私たちにとって極めて重要なライフスキルと言えます。そのため、認知行動療法でもストレスコーピングはとても重視されています。ストレッサーへの対処法として、ストレッサーが起こることを予測し、対応を決めておくことは、ストレス予防にとって有効な手段です。焦ってイライラしたり、緊張が続くと、ストレスの影響を受けやすくなります。そんなときこそ、体調を崩さないよう、生活管理が必要になってきます。

―待合室で読める本から―

「社会不安障害とひきこもり」(白揚社) 北西 憲二 中村 敬 編
人前で話すのが苦手、人と食事するのが苦痛、人と接するのが怖くて家から出られない、そのような対人恐怖をもつ人たちをどう理解し、どう治すかについて解説。対人恐怖や不安神経症の治療実績を森田療法によるアプローチにより、多くの症例とともに提示しています。
「エイトマインドフル・ステップス」(サンガ) バンテ・H・グナラタナ 著
ブッダの説かれた生きる道、八正道を現代社会で実践するためのガイドブックです。気づき(マインドフルネス)とは、いま起こっていることに瞬間瞬間、注意を向けることです。欲と怒りと無知の3つがあらゆる苦しみをひき起こしているとして、正しい気づきに導きます。
「対人恐怖と社会不安障害」(金剛出版) 笠原 敏彦 著
本書は,長年「対人恐怖」の治療に携わってきた著者が自らの臨床的研究の成果を集大成したものです。多彩な病態を呈する対人恐怖や社会不安障害の概念と診断を整理し、多くの症例をまじえながら、治療面接の進め方、薬物療法のコツが詳しく解説されています。
長崎の心療内科・精神科
もとやま心のクリニック