長崎の心療内科 もとやま心のクリニック コラム「LOUNGE-6月号」梅雨時の「うつ」にならない過ごし方

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コラム「LOUNGE-6月号」梅雨時の「うつ」にならない過ごし方

(2017年6月5日掲載)

 四季折々の美しさを楽しんでいる私たちも、梅雨の時期はどうしても憂鬱な気分になってしまいます。雨が続いたり、急に晴れ間がのぞいたりして気候が不安定で、蒸し暑い日もあれば、肌寒い日もあります。雨の日に気持ちが憂うつになってしまう理由は、気候によるストレスが大きく関係しています。気圧・温度・湿度の変化に心と身体が一生懸命順応しようとしますが、負荷がかかることによってストレスが生じているのです。冬と同じように、雨の日が続くと日照時間が少なくなるので、うつ症状を招きやすくなります。気持ちを明るくしたり、やる気を高めたりする作用がある神経伝達物質「セロトニン」は、日光を浴びることで生成されます。セロトニンが不足すると、気分が落ち込んだり、うつ症状が表れやすくなったりするのです。また、夜になるとセロトニンをもとに、睡眠ホルモンである「メラトニン」が作られます。セロトニン不足は睡眠不足にもつながるため、うつ症状の原因になります。日照時間が短い梅雨の時期は、メラトニンの分泌のタイミングが遅れたり、過剰になったりするため、睡眠の質が低下してしまいます。そのため、心身へ負担がかかってしまうのです。そのため、梅雨の合間の貴重な晴れの日には、できる限り自然な太陽の光を浴びることが大切です。

 最近では「6月病」なるものが社会人に多くみられるようになっています。5月病は、GWを過ぎたころから「会社に行きたくない」と感じるなど、憂うつな気分になることを言いますが、6月病では仕事のプレッシャーと梅雨時の天候不順で体調を崩し、心も元気をなくしていくのです。主な症状は、食欲不振、眠れない、会社に行こうとすると気分が悪くなる、などです。だんだんと会社を遅刻しがちになり、最悪出勤できなくなることもあります。ストレスにより引き起こされる適応障害とも言えます。真面目で几帳面、物事をしっかりと考えてから行動するタイプの人が、6月病になりやすいといった特徴があります。こういったタイプの人は、「できません」と言えず、自分の能力を超えて頑張ってしまうのです。また、梅雨時の気圧の低い状態は、炎症物質(発痛物質)であるヒスタミンの分泌が多くなると言われています。そのため、肩こり、偏頭痛、腰痛などがひどくなる人も増えるのです。ヒスタミンは、身体を緊張させる交感神経を刺激するので、身体は「ストレス」を感じやすくなります。末梢血管が収縮し、手足の先の血めぐりが悪くなり、手足の先の冷えにつながってしまうのです。

 では、どのような対策が必要なのでしょうか。梅雨の時期のように、気候によるストレスが憂うつな気分を導き出してしまっている場合は、精神的なケアだけではストレス対策にはなりません。心と身体はつながっていますので、身体のケアをすることで心のバランスを保つこともできるのです。エアコンのドライモードをうまく使って、快適に感じる湿度をキープし、睡眠リズムを整えることも大切です。梅雨の時季は夜遅くまで仕事をしたり、飲み歩いて暴飲暴食をしたり、寝る直前までスマホやパソコンをいじるのは避けましょう。また、朝起きて晴れていたらすぐに窓際に行ったりして、日中も晴れ間を逃さずに日光を浴びることを心がけ、セロトニンをしっかり分泌させます。雨が降ってもできるような、室内での適度な運動を心がけるとよいでしょう。安定した食生活、規則正しい生活を送ることが心の安定を取り戻す近道です。リラクゼーションを促す音楽を聴きながら読書をしたりして、気持ちを穏かにするのも良いでしょう。一方で、モチベーションを高めたいときは、感情を素直に表現できる映画を見たり、ヨガなどストレッチ系の体操をしたりして、新たな刺激を与えると血液循環がよくなり身体が目覚めます。雨だからできないではなく、雨の季節だからこそ、楽しめるものを見つけ出してみましょう。この季節は夏を楽しむための心身のバランスを整える準備期間でもあります。

―待合室で読める本から―

「気持ちの整理練習帖: 不思議なくらい心が軽くなる26のスイッチ」(三笠書房) 大野 裕 著
不安・心配なことほど書き出してみて、ときにはあえて「自分中心」を貫き、感謝の気持ちをきちんと伝えるなど、誰でも今すぐ始められる、“感情”との上手なつき合い方を伝授。書き込むだけで心がラクになります。
「マンガでわかりやすい ストレス・マネジメント―ストレスを味方にする心理術」(きずな出版) 大野 裕 著
私たちを苦しめる様々なストレスは、悪い面ばかりではなく、ストレスを味方にすることで、潜在的なこころの力を引き出すことができるのです。本書は、それぞれ立場、年齢、性別の違う4人の主人公が、ストレスを味方にしていくストーリーをオムニバス形式のマンガで紹介しています。
「マンガでわかりやすい うつ病の認知行動療法―こころの力を活用する7つのステップ」(きずな出版) 今谷 鉄柱 著
認知行動療法初心者向けに作成されたわかりやすい内容となっています。うつ病の人はもちろん、 悩みを持つ人、それを支える人、 多くの人にぜひ手にとっていただきたい一冊です。
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