春になると心がうきうきしてきますが、そんな思いとは裏腹に気分が沈んで体調を崩したり、やる気がなくなることはありませんか。原因としてはさまざまな意見がありますが、特に日本の場合は、入学、入社、進級、転居などの大きな変化は“木の芽時”と言われる春に集中します。慣れ親しんだものとの別れが契機となり、悲哀感、絶望感、虚無感に苛まれることがあります。一般に「季節性気分障害」と分類されるものは、秋から冬、日照時間が短くなっていく時期に起こり、睡眠増加や過食、体重増加などの症状が出ます。冬の間は日照時間の減少から「脳内のセロトニン不足」が起こり、不安が増大し、うつ状態をきたしやすくなります。さて、春になると日照時間は次第に長くなっていきます。気温差が激しくなり、自律神経による調節が難しくなります。つまり、「春にうつ病が増える」原因は、三寒四温という気温の変化によるストレス、そして新しい環境に入ったり、人間関係での別れなど、生活習慣の変化をきっかけとしていることが多いと予想することができるでしょう。
こういった変化をきっかけにしたうつ状態の分類には、長期の仕事が完了し、緊張のバランスが一時的に失われて起こる「荷下ろしうつ病」、大震災や迫害などによって生活の基盤がなくなったことで起こる「根こぎうつ病」、打ち込んできた仕事などが不成功に終わるなどして、落胆し自己嫌悪に陥ることで起こる「燃え尽きうつ病」などがあります。いずれも「心の風邪」とも言われ、誰にでも起こり得ます。周囲の人や本人自身が「怠けている、しっかりしないと、頑張らないと」など、励ましたり反省を促すことは逆効果になります。規則正しい生活を送り、運動や娯楽などでストレスの発散をする、仕事や勉強に追われることなく休んでみるなどの対策が有効です。場合によっては、十分な休養と薬物療法で治療が可能ですから、心療内科や精神科などへの相談をおすすめします。
また、もし自分が上司、教師、先輩、同僚として、誰かの抑うつ傾向を見つけたら、「怠けている」と決めつけないことはもちろんですが、「うつ病である」とも決めつけず、まずは産業カウンセラー、心理カウンセラーなど、専門家への相談を促してあげるのもよいでしょう。本人も早く普通に仕事や勉強ができることを望んでいますが、それができない状況が自身の能力のせいだと感じさせるような言動は避けた方が良いようです。いきなり「病院へ行きなさい」ということも、抑うつ感を持つ本人にとってはつらいものです。まずは傾聴のスキルを持つ専門家に話を聞いてもらってから、専門病院へ誘導してもらうことが肝要です。