コラム「LOUNGE-11月号」児童や青少年にみられる強迫性障害
(2015年11月05日掲載)
「強迫」は一般的によく使われる言葉ですが、人によって違った意味で使います。強迫性障害(OCD)は不安障害の一種です。OCDを抱えていると、児童や青少年は強迫観念または強迫行為、あるいはその両方に苦しみ、例えば学校の登校時間を守る、宿題を終わらせる、友達との外出といった毎日の生活に影響を及ぼします。考えや情景といったものが繰り返し頭に浮かび、ふり払うことが困難でくだらなく不愉快に感じます。これは強迫観念と呼ばれ、次のような例が挙げられます。「20まで数えないと何か悪いことが起きると考えてしまう」「バイ菌や病気を心配する」「物が片付いていないと気になる」。また、「無意味なことやしたくないことを繰り返さずにいられない」ことを強迫行為と呼び、「電気が消えているか何度も確認する」「手を何度も何度も洗う」「頭の中で数を数えたり言葉を何度も唱えたりする」等があります。
そして、このような強迫行為を止めようとしますが、最後まで終わらせないとストレスを感じたり不安になったりします。強迫観念や強迫行為は苦痛や不安を引き起こし、OCDを抱えた児童は、家庭にいる場合は家族と、学校では友人との間に影響が出始めます。児童や青少年の多くに軽度の強迫観念や強迫行為が見られる時があり、おもちゃを決まったやり方で整理しなければ気がすまない、「おやすみ」を決まった回数言わなければいけない、といった例が挙げられます。これはごく普通であって、ストレスあるいは変化に対する不安からくるものかもしれません。
強迫性障害であると判断するには、本人が強迫行為に動揺する、毎日の生活へ支障をきたす(学校生活や友達など)ことがありましたらその可能性が高いでしょう。強迫性障害はあらゆる年齢の人々に影響し、社会的地位、宗教または性別に関係ありません。また、強迫性障害を引き起こす原因はまだ特定されていません。脳内の化学物質「セロトニン」のバランス異常が原因との研究もありますし、遺伝やチック症(けいれんのような動き)の家族がいる場合に起こりやすいとも言われています。まれに病気の後で現れることもあり、事故のような人生で困難な時期が過ぎてから起こることもあります。
強迫性障害に有効な治療法は二つあります。行動療法と薬物療法ですが、この2つの治療は単独あるいは両方同時に用いられます。児童や青少年の場合は、両方の治療法が考慮されるべきです。行動療法は問題を調べることから始まります。児童や青少年とその家族が、強迫観念や強迫行為を日記につけることもあります。問題に少しずつ対処していきながら、児童や青少年が問題をどうやってコントロールするか学ぶことが、治療の目的です。本人が治療の計画に積極的に参加することが重要であるため、治療者と協力して治療プログラムを作ります。曝露・反応防止法(Exposure and Response Prevention, ERP)は治療者の協力で、児童や青少年が恐れていることや避けてきたことに向かい合う治療法です。強迫性障害によって引き起こされる不安をコントロールするために、いろいろな対処法を学びます。親や家族の誰かが強迫性障害の儀式に加わっていることがよくあります。家族は強迫性障害について学び、子どもの闘病を支える必要があります。EPR法は、親が子どもや治療者と協力して、子どもが強迫儀式に抵抗できるようになり、強迫儀式に関わることには家族が「NO」と言えるような方法を見つけます。薬物療法は強迫性障害の症状をコントロールするのに効果がありますが、再燃を防ぐために長期的治療になるかもしれません。
(「日本語版こころの健康ガイド」より抜粋)
―待合室で読める本から―
「ひきこもりはなぜ治るのか?-精神分析的アプローチ」(筑摩書房) 齋藤 環 著
「ひきこもり」の治療や支援は、どのような考えに基づいて行われているのかについて、その研究の第一人者である著者が、ラカン、コフート、クライン、ビオンの精神分析家の理論を用いて、「ひきこもり」の若者たちの精神病理をわかりやすく解説しています。
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「16歳の迷っていた僕への手紙'12 -不登校、いじめ、心の病 みんな乗り越えられたよー 」(学びリンク) 学びリンク編集部編
未だトンネルの先にある光が見つからない子どもたちのために開催されている、出版元の「体験談を聴く会」での生の声が編集されており、“自分らしく生きるとはどういうことか”についてのヒントが得られます。
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「学校へ行けない僕と9人の先生」(双葉社) 棚園 正一 著
小〜中学校時代、不登校だった著者の実体験を基にした物語で、学校へ行けない日々、「9人の先生」との出会いと別れを通じて、喜び、傷つきながら成長していく少年の姿が描かれています。
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