長崎の心療内科 もとやま心のクリニック コラム「LOUNGE-9月号」高齢者のうつ病

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コラム「LOUNGE-9月号」高齢者のうつ病

(2015年09月01日掲載)
誰でも時には沈んだ気持ちになります。しかし、晩年になると気落ちする理由が増えるものです。仕事をやめる(定年退職や解雇)、金銭に余裕がなくなる、 関節炎など健康の悩み、配偶者(パートナー)や友人の死などに直面しやすくなります。気持ちが落ち込み憂うつに感じることだけがうつ病の兆候ではありません。たとえば、興味がなくなる、いつもは楽しんでいることが楽しめない、理由もなく疲れた感じになり何もする気になれない、簡単なことをするにもとても骨が折れる、食欲がなくなり、体重が減る、落ちつかず、リラックスできない、自分が役立たずで他の人の負担になっていると感じるなどです。
高齢者の特徴は、身体の病気によってうつ病と似た症状が出ることがあります。たとえば、食欲がなくなることやよく眠れないことは、甲状腺や心臓の病気、関節炎でも起こりうる症状です。そして、心配事や不安があると、記憶力に影響し混乱することがあります。単にうつ病であったとしても、自分が認知症を患っていると心配するかもしれません。また、一人で生活しているからと言ってうつ病になるわけではありませんが、特に理由もなく孤独感を感じるようになったら、それはうつ病の兆候かもしれません。
気分の落ち込みを強く感じるのであれば、決して気持ちが弱いのではなく、今は助けを必要としている、ということなのです。まずは、かかりつけ医に相談しましょう。かかりつけ医はうつ病の方を診る機会が多く、対処法をよく知っています。外出するのが難しければ往診をお願いしても良いです。高齢者は、気分がすぐれないことよりも身体の不調をより深刻に考えがちです。医師が特に健康の問題はないと言っているにもかかわらず、自分は何か病気があるのではないかと心配し続けていることが、うつ病の兆候という場合もあります。うつ病は、他の病気同様に治療可能な病気です。
抑うつ状態になると、自分自身を責める傾向にあります。これはうつ病により、物事を否定的にとらえるようになるためです。自分に責任がないことにまで、自分を責め始めるかもしれません。多くの場合、配偶者(パートナー)や親友の死のようなきっかけがあって始まります。困難なことや辛い状況に直面した時に、抑うつ状態になるという人もいます。それは私たちの気質なのです。甲状腺の機能障害、脳梗塞、パーキンソン病のような身体の病気により、抑うつ状態になることもあります。このような型のうつ病には、治療の効果がよく現れます。また、内服している薬の影響によりうつ病になることがあります。
自分でできることを試みてみましょう。困っていることをかかりつけ医に相談することは大切です。身体の調子が悪かったりして定期的に出かけるのが難しいこともありますが、定期的に運動を行えば、気分がよくなるものです。ちょっとした散歩でもいいのです。ひとりで家にこもっていると、物事をくよくよと考えるようになり、より気分がすぐれなくなることがあります。人との交流、趣味や興味のあることの継続、友人や家族と交流を持ち続けること、地域の催し、食事会やお茶会、デイケアに参加すること、規則正しく食べること等は役に立ちます。うつ病は治療可能な病気であることを念頭に置いておくことは肝要なことです。
(「日本語版こころの健康ガイド」より抜粋)

―待合室で読める本から―

「老人性うつ」(PHP研究所) 和田 秀樹 著
認知症と誤解されがちな“老人性うつ”の実態から、早期発見と治療までを平易に解説しています。若い人や中高年には見られない高齢者特有のうつ症状を感じたら、“ボケ”よりも先に“老人性うつ”を疑うことも肝要です。
「本好きのためのウォーキング入門」(平凡社) 武村 岳男 著
ひたすら歩くウォーキングとは異なり、知性と感性で楽しむ“スローウォーキング”について、川端や太宰、安吾、藤沢周平など、文豪が遺した名作の舞台や場面を訪ねています。
「“一人時間”を楽しむ生き方、暮らし方」(廣済堂出版) 川北 義則 著
別居志向や晩婚化、結婚率の低下、離婚率の増加など「一人で生きる時代」である現代社会で、上手な一人暮らしを送る秘訣を教えてくれます。サラリーマン時代から「一人で生きる覚悟」と「一人で愉しむ術」を心得て準備すれば、充実・納得の人生が得られるかもしれません。
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