コラム「LOUNGE-4月号」過食症(神経性大食症)について
(2015年04月09日掲載)
過食症は、自分の体重が気になって仕方がないのにむちゃ食いをする、カロリーを摂らなかったことにするために食べた物を吐き戻したり下剤を使う、生理不順になる、疲れやすい、罪悪感に陥る、ダイエットの甲斐なく、標準体重のままでいる等の症候がみられます。10代半ばから始まりますが、仕事や社会生活に支障をきたすようになっても過食症を隠し通すことができるため、20 代前半から半ばになって初めて助けを求めるようになるのです。たいていの人は、自分の生活が変わった時、たとえば新たな人間関係の始まりや初めて誰かと一緒に住むようになった時、受診に至ります。
冷蔵庫をあさって食べたり、普段なら控えているはずの高カロリーの食べ物をたくさん買ってきては、他の人に隠れてすばやく全部食べてしまいます。むちゃ食いの欲求から、他の人の食べ物を盗み食いしたり、万引きまでしてしまうかもしれません。食べるものを制限していたために通常の食事では満足できず、食べることがやめられなくなります。そして、お腹が一杯で苦しくなり、おそらく罪悪感から落ち込むでしょう。無理やり食べた物を吐き戻そうとしたり、下剤を使って排泄を試みたりします。とても不快でぐったりしてしまいますが、むちゃ食いをしては吐き戻したり、下剤で排泄することの繰り返しから抜け出せなくなります。
原因については明確な答えはありませんが、次にように説明ができます。1.社会からのプレッシャー:私たちの行動は、置かれている社会環境から強烈な影響を受けます。痩せていることに価値を見出さない社会では、摂食障害はほとんど見られません。テレビや新聞、雑誌では、偶像視された作りもののようなスリムな人たちの写真が溢れています。そのため、いつしか多くの人がダイエットを試みるようになります。一部の人たちは極端なダイエットにより、拒食症に陥ってしまうのです。2.体内スイッチがない:大抵の場合、きちんと食べなければならない時期を身体が教えてくれます。拒食症の人には、このような体内「スイッチ」がないこともあり、危険な状態にあっても体重を落とし続けられるのでしょう。3.コントロール:ダイエットはとてもやりがいのあることもあります。体重計に乗り1〜2キロ減っていると達成感があり、このように目に見える形で自分自身をコントロールできると気分がいいものです。人生の中で、唯一自分でコントロールできるのは体重だけなのかもしれません。4.家族:食べることは、人と一緒に生活する中で重要な一部分です。食べ物を受け入れれば相手が喜ぶし、断れば相手を心配させてしまいます。とりわけ、家族の間ではそうです。食べ物を「いらない」と言うことが、唯一の感情表現だったり、家族の問題に対する主張だったりするのかもしれません。5.うつ状態:落ち込んだ時や、あるいはただ退屈なだけも、私たちの多くは安らぎのために何かを口にしてしまうものです。過食症の人は気分がふさぎ込んでいることが多く、憂さ晴らしの方法の一つとしてむちゃ食いを始めてしまうかもしれません。6.自尊心の低さ:過食症の人はたいてい自分のことを大事に考えておらず、他の人よりも劣っていると思いがちです。減量することは、自信や自尊心を得るための方法なのかもしれません。
認知行動療法(Cognitive Behavioural Therapy; CBT)は自身の考えや感じ方を詳しくみていくのに効果的です。むちゃ食いのきっかけを見つけるのに、食習慣の日記をつけることも必要かもしれません。そうすれば、その状況や気持ちに対して、もっとよく考え、上手に対処できるようになるでしょう。拒食症の治療と同様、あなたが自分の価値を取り戻せるようにセラピストがサポートしてくれます。また、対人関係療法(Interpersonal Therapy; IPT)は自身と周りの人との関係をより重視します。友達を失ったとき、愛する人が亡くなったとき、引越のような人生で大きな変化を経験したとき、この治療法により、頼りになる人間関係が再建できます。人間関係は、食べることよりも、情緒を安定させるのにずっと大事なものです。薬物療法は、うつ状態でなくても抗うつ薬を高用量で服用すると、むちゃ食いを抑えることができます。服薬を始めてから2〜3週間で症状が軽減し、心理療法への「弾み」になるでしょう。
(一部「日本語版こころの健康ガイド」より抜粋)
―待合室で読める本から―
「忙しい人のための“一品で"栄養バランスが取れるレシピ―女性医師が教える体と心が喜ぶ食事」(SBクリエイティブ) 河埜 玲子著
健康的な食生活を続けるには、食事作りの負担が少なく、作る人にも優しいレシピが不可欠です。忙しくて時間がなくても、手作りのお料理で自分自身や家族の心と健康を守りたいと思っている方にお薦めです。
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「女性ホルモン力を上げて40代からの不調を治す本」(芸文社) 阿部 佐智子著 満尾 正監修
更年期症状に対し正しい対応をすることで、現在の体調や将来の健康、見た目の若さにも大きく違いが表れます。日常的な食事を見直し、さらに簡単なセルフケアを行うことで、クスリに頼らず体質を改善するための情報を紹介しています。
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「若返る食べ方 (GEIBUN MOOKS 782 『はつらつ元気』特選ムック)」(芸文社)
阿部 佐智子著 里見 英子監修
食習慣で若さを取り戻すレシピが、カラーページで紹介されています。食材選びやメニューの組み立て方の参考になります。ウォーキングやヨガを取り入れることでさらに元気になります。
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