コラム「LOUNGE-2月号」運動とこころの健康
(2015年02月02日掲載)
運動することで心と体を健康に保つことができます。しかし、どのようにおこなえばよいのでしょうか。心と体は別物であるように思われがちです。しかしそうではなく、体が正常に機能しなければ、心も機能しません。また、その逆もしかりです。心の状態は体に影響を与えます。つまり、もし気分が沈んだり不安を感じたりすると、活動が減って元気がなくなります。そうすると、さらに気分が落ち込み悪循環に陥ってしまいます。体がきちんと機能するためには定期的な運動が必要です。そして、たいていの人は活動的でいると気持ちがいいと感じます。今日の先進国では、人の活動の多くが機械化されています。車を運転すれば歩く機会が減り、掃除機を使えば掃除が楽になります。また、洗濯も機械がしてくれます。職場では、オフィス内を歩き回る必要さえないかもしれません。コンピューターの前に座っているだけで充分なのです。さらに悪いことに、現代の食事はカロリーが高く、人々は肥満になる傾向があります。
たいていは、動くことが少ないほど次のような症状になりがちです。<気分が落ち込む/うつ状態になる。緊張し、心配になる。>ところが、日常的によく動いていれば、次のようなことが期待できます。<気分が落ち込みにくく、不安を感じにくくなる。自分自身に対して肯定的になりやすい。何かに対し、より全力で集中できるようになる。よく眠れるようになる。年をとっても自分で動き回ることができるため、自立している。記憶障害や認知症になる可能性が低くなる。>今から少しだけ、日常生活の中に身体的活動を取り入れることから始めましょう。たとえ小さな変化でも、やる気を高め達成感を感じることで気分も良くなります。体を動かすには、楽しめること、自分が得意と思えること、またはできると思えることをしましょう。ガーデニング(庭仕事)や日曜大工(DIY)も体を動かすことが増えます。何をするかは自分で決めます(したがって、運動しなければならないと感じ始めたら、よくありません)。
運動すると、ドーパミンやセロトニンといった特定の脳内化学物質に影響があるようです。脳細胞はこれらの化学物質を使って互いに情報のやりとり(伝達)をしており、この活動が人々の気分や思考に影響を与えます。運動することで、「脳由来神経栄養因子」とよばれる、別の脳内化学物質が刺激される可能性があります。この因子には、新しい脳細胞の成長と発達を促す働きがあります。適度な運動のほうが、激しい運動よりも効果があるようです。適度な運動とは大まかにいって、早く歩きながら会話ができる程度です。少なくとも週5日、適度な身体的運動を30分ほどする必要があります。30分まとめて行なってもよいですが、10分、15分と分けて行ってもかまいません。適度な運動で、心臓病や糖尿病、がんなどのリスクが低くなるだけでなく、気分が落ち込むのを防ぐと考えられています。疲れたり忙しすぎたり、あるいは心配ごとがあって運動する気にならない日もあるでしょう。そのような時でも、日課を守り運動をすれば、ほぼ確実に気分がよくなります。
うつが軽度の場合、身体的活動は抗うつ薬や認知行動療法のような心理療法と同等に有効です。もちろん、気分が落ち込んでいるときに活動的になるには困難がともなうでしょう。しかし活動的になることで、気分が良くなり、物事をコントロールしていると感じ、さら に他の人々ともつながりを持てると感じられるようになります。中には費用がかからないものもあります。ウォーキングにはお金はかかりませんし、ジョギングは靴が一足あれば十分です。もし既に自転車を 持っているなら、通勤(あるいは定期的な移動)に自転車を使ってみましょう。しばらく体を動かしていなかったのなら、最初からやりすぎると疲れてしまいます。なにをやるにしても、近所を歩くなどの楽なことから始めましょう。1分や2分長めに行なう、あるいは数メートル長くといったように、毎日徐々にレベルを上げていきましょう。
(「日本語版こころの健康ガイド」より抜粋)
―待合室で読める本から―
「幻滅と別れ話だけで終わらないライフストーリーの紡ぎ方」(朝日出版社)
きたやまおさむ よしもとばなな 著
小説家・よしもとばななと精神分析医・きたやまおさむが、『古事記』、浮世絵、西洋絵画、映画、マンガにいたるまでの文化の深層を語り合い、日本人のこれからのあり方を「並んで海を眺める心で」いっしょに考える、新しいスタイルの講義・対談となっています。
きたやまおさむ よしもとばなな 著
小説家・よしもとばななと精神分析医・きたやまおさむが、『古事記』、浮世絵、西洋絵画、映画、マンガにいたるまでの文化の深層を語り合い、日本人のこれからのあり方を「並んで海を眺める心で」いっしょに考える、新しいスタイルの講義・対談となっています。
「星の巡礼」(角川文庫) パウロ・コエーリョ 著
ピレネー山脈からサンチャゴへと続く巡礼の道を歩く著者に、様々な試練が課せられ、人生の道標を見つけるための、自らの体験を描いた感動の物語です。
ピレネー山脈からサンチャゴへと続く巡礼の道を歩く著者に、様々な試練が課せられ、人生の道標を見つけるための、自らの体験を描いた感動の物語です。
「30冊の本」(PHP研究所) 山川紘矢 山川亜希子 著
精神世界の良書を数多く翻訳してきた著者が、「ぜひ読んでおいてほしい」という本を30冊厳選し、自身の思想を語りながら、内容の解説をするものです。著者との交流のエピソードなど、貴重な体験も紹介されています。
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