長崎の心療内科 もとやま心のクリニック コラム「LOUNGE-10月号」中年の危機と心のあり方

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コラム「LOUNGE-10月号」中年の危機と心のあり方

(2014年10月07日掲載)
40代から50代の中年期は人生の様々な苦難に遭遇しやすい時期ではないでしょうか。加齢の影響を初めてはっきり自覚し、ため息をつくような時もあるでしょうし、深刻な病気にかかり健康を損なってしまった、あるいは離婚して、寂しい日常になった、場合によっては、シングルマザーで辛い毎日をこぼす相手もいないような状況にあるかも知れません。こうした中年期に起こり得るさまざまな苦難は時に中年の危機と呼ばれます。
年齢を重ねるにつれ、身体機能は程度の差はありますが、体力は徐々に低下していくものです。40代、50代ともなれば、肉体は20代の頃とはかなり違ってくるでしょう。近くの物を見るにはメガネが必要となり、腹回りも随分、立派になってしまい、外見が望まぬ方向に変化してしまうと、気持ちはあまり冴えないでしょう。周囲の目も以前とは違ってくることもあり、例えば、40代になった途端、若い異性に人気が無くなったといった、ちょっと悲しくなるような事態もあるかも知れません。
また、加齢の影響による心身の不調、例えば、性ホルモンの分泌低下による更年期症状は女性のみならず、男性にも出現する可能性があります。その現われやすい症状としては顔のほてり、発汗、動悸といった身体症状のほかに、不眠やイライラ感など精神的な症状もあります。もしも、それらの自覚がある場合、病状に応じて、性ホルモンの補充療法など、効果的な治療法もあります。中年期を充実させるために健康の重要性は広く言われていることですが、たとえば「暴飲暴食は避け、食事は腹八分目にする」「睡眠時間を充分に確保し、適度に運動する」といったことは、ある程度の期間、実践してから効果を実感するといった面もあります。
そこで、著名な発達心理学者であったエリクソンが提唱した中年期の発達課題は充分に参考になると思います。中年期の発達課題は、自分自身の目標を達成するだけでは充分でなく、次の世代をサポートする事が心の充実感を得るために必要だとされています。一昔前までは、習い事に関しては、師匠につき、弟子として学ぶというスタイルが一般的だったと思います。師匠が弟子を鍛えるという事は、中年期の発達課題という面から見れば、実は師匠の心の健康にも役立っていたのではないでしょうか。もっとも何かの道に秀でて、人さまの師匠になる事は、かなり難しい事でしょうが、自分の子供たちも含め、広い意味で次の世代のために何らかの貢献をしていく事は中年期に充実感を得るポイントの一つです。そして、若い世代と張り合いたくなる気持ちを、若い世代をサポートするという意識に置き換えていく事もエリクソンが説いた中年期の発達課題では肝要なことです。

―待合室で読める本から―

「自分でできる対人関係療法」(創元社) 水島広子著
対人関係、なかでも配偶者や子ども、恋人、親友など、最も身近な人たちとの関係は、心の健康に大きな影響力をもちます。「重要な他者」と「現在の」関係に焦点を当てて治療する「対人関係療法」についてわかりやすく解説しています。
「承認をめぐる病」(日本評論社) 齋藤環著
他人に認められないと、自分が愛せない病。自分を認めてもらいたい気持ちに過度にこだわるとき、人はさまざまな病理を露呈します。気鋭の精神科医が世相を読み解きます。
「自信をつける心理学」(大和書房) 加藤諦三著
劣等感の強い人は人を愛せないし、好きなことも見つからず、人間関係もうまくいきません。そのような劣等感に悩まされないために、大切な「心の持ち方」「ものの考え方」を、心理的な法則に沿って説き明かしてくれます。
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