長崎の心療内科 もとやま心のクリニック コラム「LOUNGE-7月号」ねむれないときの睡眠薬の用い方

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コラム「LOUNGE-7月号」ねむれないときの睡眠薬の用い方

(2013年07月01日掲載)
不眠に対しクスリを用いることに偏見や誤解を抱いている方が見受けられます。「クスリに頼らなくては眠れない体質になってしまうのではないか」「精神に異常がある人が飲むものではないか」「我慢していれば眠れるようになるのではないか」などと考え、クスリを使ってまで眠ろうとは思わないのです。しかし、我慢して不眠が続くことで血圧が高くなるなど身体への影響も無視できませんし、米国でのように自らの健康のために、また生活を快適にする道具として用いるということも大切かもしれません。
 一口に不眠と言いましても、様々なタイプがあります。寝付きが良くない、長く眠れない、そのどちらも当てはまるなどです。ストレスからの逃避としての過眠もあります。特殊なタイプの睡眠障害として、眠っているときに呼吸が数十秒間停止してしまう睡眠時無呼吸症、急に眠気に襲われるナルコレプシー、長く眠気が続く特発性過眠症などは鑑別を要します。最近ではむずむず足症候群による不眠症の方もよく見受けられるようになりました。これは睡眠薬だけでは改善が困難です。
 では睡眠薬はどのように用いるのでしょうか。本年6月、日本睡眠学会から発行された「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン」では、エビデンス(科学的根拠)に基づいた治療が推奨されています。一昔前と異なり、安全性については適切に使用すると心配するようなことは起こらないと言えます。クスリの作用機序として、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は大脳辺縁系に作用しGABAという脳内物質を介して、様々な神経の機能を抑えるように働きます。そうすると不安や緊張がなくなり、次第に眠くなるのです。最近では、より依存度の低い非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬も広く使用されるようになりました。
 具体的な使用法として、入眠困難のタイプには作用時間の短い短時間型の睡眠薬を用います。一日の睡眠を8時間として、前半の4時間を睡眠薬の力を借りて、後半の4時間を自然睡眠で眠ることになります。アモバン、リスミー、ハルシオン、マイスリーなどです。寝付きは良いが長く続かない中途覚醒のタイプには作用時間の長い中間型の睡眠薬を用います。ユーロジン、ロヒプノールなどが代表的な薬剤です。寝付きも悪いし、長く眠れないというタイプの場合、短時間型と長時間型の2種類を併用します。このように睡眠薬は不眠症のタイプにより使い分けますが、処方通りに用いられる分には問題はほとんどありません。薬物療法についての適切な知識をもち、エビデンスに基づいた治療を受けることが肝要なのです。

―待合室で読める本から―

「やさしくわかる認知行動療法」(ナツメ社) 福井至 貝谷久宣 著
考え方のクセを見直し、ものごとの捉え方を変えて行動してみることで、つらい気分の原因を解消できます。本書では、認知行動療法の基本的な考え方と治療の流れをわかりやすく解説しています。
「マンガ 心のレスキュー」(北大路書房) 越野好文 作 志野靖史 画 
治りやすいけれど多くの人が苦しんでいる代表的な4疾患であるパニック障害、強迫性障害、うつ病、睡眠障害を取り上げマンガでわかりやすく解説し、Q&Aで関連知識を補足しています。
「ひきこもれ ひとりの時間をもつということ」(だいわ文庫) 吉本隆明 著
“ひきこもり”というと一般的に否定的に思われがちですが、著者はこの現象の積極的な面を自己体験から解き明かしています。“思想界の巨人”が普段着のことばで、もうひとつの社会とのかかわり方を教えてくれます。
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