長崎の心療内科 もとやま心のクリニック コラム「LOUNGE-11月号」不安とストレスの見立て―心理検査を通して―

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コラム「LOUNGE-11月号」不安とストレスの見立て―心理検査を通して―

(2012年11月08日掲載)
「人と会うのが怖い、声や手が震える」などの不安障害は女性の方が男性の約2倍、発症は20歳以下である場合が多いようです。心理的ストレスが誘因となることに加え、睡眠障害や過労などの身体的要因も発症に関与しています。具体的にみていきますと、幼少期から人見知りが強く、人前での発表における緊張や国語の朗読での恐怖感を感じても、性格によるものだろうと理解し、大学を卒業するまでは何とかごまかしてきたのですが、就職など社会人となることを前にして自分を強く意識するようになり、人前に出ることに自信が持てなくなります。アルバイトなら何とかなると思い頑張ってみるのですが、面接自体緊張して声が震えてしまうし、怖くてキャンセルすることが続きます。親に相談するのも迷惑をかけるのではないかと躊躇し、結局大学院などに進学することでいったんは解決するのですが現実は変わりません。
そうなると不安や焦燥が強まり、二次的にうつ状態をきたし社会に出ることなく引きこもってしまうことも珍しくありません。いざ就労できたとしても、周囲の目が気になり、日々緊張が続きストレスで疲労困憊してしまいます。周囲とうまくやって当たり前という固定観念があり、それができない自分への劣等感と恥の感情を引き起こします。普通のことができないという思いに駆られ、いっそこの世から消えてしまいたいと思うに至ることもあるようです。職場においては、お客さんへの接遇や会議などでの報告など他者と接する機会は山ほどあります。主婦も、子供が幼稚園から小学生の世代になると、幼稚園や学校でPTAの役員を引き受ける機会が増え、お母さん方同士のお付き合いも避けられないものです。
このようなことに対し多くの方は、性格的要因と判断され、病気という視点がないように思われます。性格はすぐには変わりませんが病気としては改善します。それには、自分の不安緊張の度合いを、客観的に把握することが肝要です。ちなみに、当院で行っている質問紙法のいくつかをご紹介します。「LSAS」は重症度を評価するものです。24項目の質問について、恐怖の程度と回避の頻度を回答します。臨床症状や精神療法、薬物治療での評価尺度としても使用されます。WEB上で診断結果をまとめてくれるサイト(SAD NETなど)がありますので利用されてもよろしいかと思います。「STAI」は不安を“状態としての不安”と“特性としての不安”に区別して数値化します。状態不安は緊張と懸念という主観的で意識的に認知できる感情の高まりによって特徴づけられる一過性の状態であり、特性不安は比較的安定した不安傾向の個人差であります。臨床における異なった病態の理解や治療の進展具合の把握などに役立ちます。他に性格検査を元にした「MAS」や気分障害の尺度としての「SDS」を使用することもあります。治療につきましては、これまでのコラムに詳述しておりますので、バックナンバーをご参照いただくと幸いです。

―待合室で読める本から―

「あがり症はなぜ治せるようになったのか ―社会不安障害(SAD)がよくわかる本」(現代書林)  木村 昌幹著
専門医による薬物治療を含めたあがり症の治療について詳述しています。病気を理解し、治るということについての医学的理解が得られ、自信がもてる内容となっています。
「やさしくあがり症を治す本」(すばる舎)  鳥谷 朝代著
あがり症で長い間苦しみ、そこから脱却した著者が、自分の経験を元にあがり症克服の手順をわかりやすく解説しています。
「一対一でも大勢でも人前であがらずに話す技法」(大和書房)  森下 裕道著
人前で話すと緊張し、声や手が震えたりすることについて、様々なシチュエーションを想定し、大勢の前でも話せるようになるコツを身につけることの手助けになるかもしれません。
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