コラム「LOUNGE-2月号」 ―“明り”を生かして心身を快調に!―
(2011年2月10日掲載) 2月に入り、ようやく厳しい寒さも緩み、大分過ごし易くなってきました。これまでは朝起きても窓の外は真っ暗で、頭は覚醒しているのに身体は布団から出るのが億劫で、始動するのに時間がかかったものでした。気分は気候に関係することもあり、冬季に気分の落ち込みがやってきて春になると回復する“季節性のうつ病”では、日の光を浴びることの少なさが関係しています。
私はクリニックの診察室で日中の大半を過ごします。光が差し込んでくる窓がありますので比較的明るい空間なのですが、曇りや雨の日、日の落ちた夕方は暗く感じていました。そこで電球色のダウンライトと壁灯をつけたところ、オレンジ色の光がこころをほっとさせてくれるだけでなく、元気を与えてくれます。
ところで、気分は睡眠のあり方に深くかかわっていますので、“眠りの質について”、面接ではよく話題になります。睡眠不足が長期間続くと、狭心症などの冠動脈性疾患の発生率だけでなく、うつ病にかかるリスクも高まります。しばしば“8時間の睡眠がとれていないので大丈夫でしょうか”という質問を受けますが、年齢とともに必要な睡眠時間は減少していきますし、寝た感じというのはかなり主観的なものです。比較的短時間でもぐっすり眠られている方であれば、昼間の眠気も感じずに活動的でありますし、逆に十分の時間寝ていても眠りが浅いと朝からすっきりせず身体も思うように動かないということもあります。
では、睡眠に関係する光の調整はどのようなものが好ましいのでしょうか。良質な睡眠のためには、パソコンでの作業は早めに切り上げ、寝る前は明かりを落とし、電球色などの光で過ごすこと、それに入浴とストレッチ、BGMなどを活用すると効果的です。ちなみに、睡眠導入剤はいつ服用するのがよいかということも話題になりますが、寝る準備をしてからでも遅くはないとお伝えしています。比較的早くに服用されると寝るタイミングを逃しますし、遅くに服用すると朝起きに影響します。照明や光を生活にうまく取り入れることで、心身へのプラスの効果が期待できそうです。
―待合室で読める本から―
「乗るのが怖いー私のパニック障害克服法」 (幻冬舎) 長嶋 一茂 著著者は、読売巨人軍の現役選手だった三十歳の夏、突然パニック発作に見舞われ、以後飛行機、新幹線に乗れなくなり、ひどい眩暈に襲われるようになりました。「孤独と飢えを味方にする」という考えをベースに、自分と暮らしをシンプルにすることで改善しましたが、体験者ならではのリアルかつ具体的、実践的なパニック障害克服法です。「パニックママでもいいんじゃない」(DHC) 青柳 ちか 著
妊娠中にパニック障害とうつになってしまった著者が、出産、育児、そして2度目の出産を乗り越えて病気とともに一歩一歩生きていく様子を描いたコミックエッセイ。「大原さんちのダンナさんーこのごろ少し神経症」(文芸春秋) 大原 由軌子 著
ポテチを箸で食べる、鍵をかけたか何度も確認、外出時には帽子とマスク着用、多種多様な薬を常用する、そんなダンナさんとの出会いから第一子誕生までを描いたコミックエッセイ。