長崎の心療内科 もとやま心のクリニック コラム「LOUNGE-5月号」 面接で現実が変化していくということ

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面接室からのたより

コラム「LOUNGE-5月号」 ―面接で現実が変化していくということ―

(2010年5月6日掲載)  私たちのもとに来られる方には何らかの症状を伴っていることが多いのですが、その意味を探っていきますと、内面の心的葛藤だけでなく現実的な状況を前に“行き詰まって先に進めない”自分が浮き彫りになってくることがあります。それらの多くは生活に根付く経済的・家族的・職場的環境であり、すぐには変更の困難なものであります。そのような現実の問題をどうやって心の問題として解決していくことが可能になるのでしょうか。  外界や内面との関係の橋渡し役である自我には二つのものがあり、“体験をつかさどる自分、意識や行動の主体としての自分”である「体験自我」と、“自分を観察し内省する自分、自分を客体として見る自分”である「観察自我」に分けられます。行き詰って先に進めない自分は体験自我で、これがまず面接室に持ち込まれます。たとえば、他者の期待に応えようとして必死に働いても成果が上がらず評価されない自分、自らの衝動や願望により引き起こした行動が他者の困惑を結果し自責的になってしまう自分、上司と部下の板挟みになり身動きができず感情を押し殺している自分、そして身近な異性の予期せぬ行動がもとで嫉妬や攻撃的感情に苛まれている嫌な自分などです。  治療者は持ち込まれた問題を整理し私たち専門家の言葉で伝えなおします。いわゆる「見立て」でありますが、そうすることにより現実の問題を心理学的・精神医学的視点で捉え直します。相談者は客観的に自らの問題を評価し、提案された解決に至るいくつかの方法を選択することになります。この時、薬物治療や認知療法・精神分析的精神療法がどのように有効であるのかの説明がなされ、今後の治療のメニューが話し合われます。比喩的表現をしますと、持ち込まれた料理の素材からどのようなおいしい料理が出来上がるかは料理人の技量によりますが、何ができ上がるのかは素材を持ち込んだお客様次第なわけです。心療内科の面接では料理人任せではなく共に参加し作り上げていくところが肝要です。この大切な作業を担当してくれるのが、「観察自我」なのです。それは自分を一つの素材として客観的に見ていく作業でもあります。これまで一つしかなかった人生のシナリオが、心理学的・精神医学的フィルターを通し見直すことにより新たなシナリオを得て、私たちは再び生きていくことが可能になります。そうなると、困難であろうと思えていた現実との関係にも変化の兆しがみえてくるのです。

―待合室で読める本から―

「やさしくわかる“かおり”のしくみ」(食品研究社) 野田 信三 著
 香料全般について、その成り立ちから用い方までの解説書です。仕事や生活に“かおり”を利用するだけでなく、ストレス社会を生き抜くヒントもちりばめてあります。
「医師がすすめるアロマセラピー決定版」(マキノ出版) 川端 一永 他 著
 腰痛、肩こり、片頭痛およびアレルギー症状などを緩和してくれる補完療法として、製油の効能が説かれています。不眠症やうつなどの心のケアにも使えそうです。
「アロマテラピーバイブル」(成美堂出版) 塩屋 紹子 監修
 基本的な製油とそのプロフィールをカラー図版で紹介してあり、心と体のトラブルへの処方箋が詳しく述べられています。手元に置いて便利な一冊です。
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