長崎の心療内科 もとやま心のクリニック コラム「LOUNGE-2月号」 マイナス思考のスパイラル

もとやま心のクリニック
長崎の心療内科もとやま心のクリニックへのお問い合わせ・ご予約は095-856-3033
トップページ > 面接室からのたより > コラム「LOUNGE-2月号」
面接室からのたより

コラム「LOUNGE-2月号」 ―マイナス思考のスパイラル―

(2010年2月15日掲載)  「うつ」や「不安」という言葉は、最近よく耳にします。自分はうつ病なのかと質問される方がいらっしゃいますが、私たちの用語で「内因性うつ病」として見立てられる生物学的な基盤の強いうつ病の方は少ないようです。ほとんどの方は、仕事や学業における長期のストレスのもとで過剰適応の結果疲弊した状態や、加齢による更年期症候群などの身体的変化、職場や学校での対人的な関わりにおける困難さや職場環境の変化など、身の回りの問題から生じた「うつ病」や「不安障害」なのです。  ところで、いざ御自分がうつ病や不安障害になると、「話には聞いていたけれども、まさか自分がうつ病になるなんて信じられない」「まさか自分がパニック障害だなんて、発作さえ起こらなかったら何ら生活に支障はないのに」とすっかり意気消沈してしまいます。気分が落ち込み、強度の不安に見舞われるとすべてが無意味に思え、頭の中が真っ白になり何も考えられなくなります。このことはどんなに人に伝えようとしてもわかってもらえません。それは身近な人に同じような体験をした人がいないし、そもそも言葉にし難く本当には理解してもらえないのです。  私たちは現実に起こったことをありのままに受け止めているでしょうか。おそらく「そうだ」と答えられるでしょう。しかし、同じ現実でも人によって見え方が異なります。受け入れ難いものは見ないようにするでしょうし、その場合、現実はぼやけて遠くに見えています。たとえば、完全主義の思考は小さな失敗が完全な失敗となり、そのようなことを仕出かした自分はだめな人間だと思うでしょう。また、相手から拒否されたことが単なる偶然の出来事なのに、相手から嫌われたと感じ、自分は誰からも好かれないのだと一般化します。よく考えてみますと、些細な失敗もない完全はこの世に存在しないでしょうし、相手から断られたのもその場限りの相手の都合なのかもしれません。 このように私たちの感情は、現実がどのように見えているかという私たちの考えで決まってくるようなところがあります。上記のことで言いますと、適切なメガネを処方すると、現実がくっきりと見えてきますし、それに伴いマイナスの悲観的な“この世も終わり”という感情も変化してくるでしょう。いったんうつ病や不安障害に陥ってしまったら、悪循環によりますます気分が落ち込み不安に支配されます。このような悪循環を断ち切るきっかけと方法が薬物治療であり、認知療法であるのでしょう。

―待合室で読める本から―

「ビジネスマンの精神科」(講談社現代新書) 岩波 明 著
 うつ病やパニック障害などの紹介とケーススタディがあり職場環境に対応した精神医学の入門書です。
「生きづらい<私>たち」(講談社現代新書) 香山 リカ 著
 “心に穴があいている”をキーワードに、香山氏独特の既存の精神医学の枠組みにとらわれない視点が、現代の若者を理解する上で興味深い論考となっています。
「うつ病の脳科学」(幻冬舎新書) 加藤 忠史 著
 うつ病の原因がいまだ明確でない今日、脳科学の立場からうつ病診療における困難さを解決しようと試みた良書です。薬の効き目が不十分だと思われる方には参考になります。
長崎の心療内科・精神科
もとやま心のクリニック