長崎の心療内科 もとやま心のクリニック コラム「LOUNGE-11月号」 精神療法〜人生を語り直すこと

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面接室からのたより

コラム「LOUNGE-11月号」 ―精神療法〜人生を語り直すこと―

(2009年10月29日掲載) 当クリニックではご希望によりますが、定期にお会いしていく精神療法面接を行っています。そこでは言葉を使用した内面の理解がなされます。言葉はカタルシスや洞察を得るために必要であり、忘れられた過去の再構成の道具であります。私たちは、過去の人生物語を紡ぎ、語り直します。そうすると、人間は幼いころに書きこまれた台本を、大人になっても無意識に相手を変えながら繰り返す「過去からの反復」に気づきます。つまり「こころの癖」になっているのです。精神療法の仕事は、その方の人生物語を紡ぎ、そして「人生を語り、語り直すこと」です。
 さて、診察室の中から見える風景ですが、この1〜2年の不景気も影響しているのか、過剰適応し仕事の鬼になって体調を壊す方を見受けます。詳しくお話を伺いますと、幼少期より強い不安を抱え、本来の自己を疎外して、神経症的解決法として猛勉強したり、人より勝ろうと努力してこられた方です。現代の競争社会で生き抜くには必要なことのようですが、理性の命令を心と身体が受け付けなくなると、もともと押さえつけていた失敗不安が顔を出してくるのです。そうなると、仕事のできない自分は排除されるしかありません。
 現代人の多くは、「何かにならなければいけない」「何かを達成しなければならない」という「〜ねばならない」に強く支配されて生きているように見えます。適度なストレスとして生きる糧になればいいのですが、それができないと「ダメ人間」になってしまいます。誰も「それで良い」と言ってくれないし、まずもって自分の中にいる「こうあらねば」という思いが自己否定に導きます。そんな思いに打ちひしがれているとき、子どもの時に誰もが目にした絵本は、その人の繰り返してきた人生物語の一端に気づかせてくれ、再び人生を生きなおすきっかけを与えてくれるかもしれません。

―待合室で読める本から―

「君のいる場所」(小学館)  ジミー 著
 人間の出会いをテーマに、すれ違いと信じることをめぐり、私たちの中にある揺れ動く心の機微を描いた美しい作品です。
「はだかのカエルとはだしのライオン」(講談社)  ささめやゆき 著
 私たちが成長の過程で身につけた服は、身の丈に合ったものか、もう似合わなくなっているのか、今の生き方を考え直すことを教えてくれる一冊。
「つみきのいえ」(白泉社) 加藤久仁生 平田研也 著
 海に立つ不思議な家に住むおじいさんのお話です。原作アニメが米国アカデミー賞受賞しているので、映像を彷彿とさせる展開が興味深いです。
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