適応障害
適応障害とは、ある社会環境においてうまく適応することができず、さまざまな心身の症状があらわれて社会生活に支障をきたす状態です。一般に、新しい環境に慣れて社会適応するためには、多かれ少なかれ苦労をしたり、いろいろな工夫や選択をする必要にせまられることはよくあることです。それがうまくいかなくなった場合には、会社では職場不適応、学校では不登校、家庭では別居あるいは離婚などといった形であらわれます。日常には大小さまざまなストレス因子があふれていますが、それらへの反応には個人差が大きく、ある人はやり過ごすことができても、別の人にとってはひどく苦しみに満ちた体験になる場合があります。その結果、うつや不安状態をきたし、従来はできていた責任の遂行などができなくなる場合があります。このような状態が「適応障害」にあてはまることがしばしばあるのです。
症状としては、不安、抑うつ、焦燥、過敏、混乱などの情緒的な症状のほか、不眠、食欲不振、全身倦怠感、易疲労感、ストレス性胃炎、頭痛、吐き気、発熱、などの身体的症状が自覚症状としてあらわれますが、身体的症状のみを訴える場合、検査では確認できないため心療内科以外の病院では見過ごされることが多いようです。逆に、吐き気や頭痛などの症状があるにもかかわらず病院で異常なしと言われた場合、適応障害であることも考えられます。軽度のうつ病と区別がつきにくく、放置しているとうつ病になることもあります。適応障害がもとで発生する身体的な異常として、自律神経失調症や心身症などが含まれます。
適応障害の治療は、まず原因となっている心理社会的ストレスを軽減することが第一です。環境要因を調整し適応しやすい環境を整えることや、場合によってはしばらく休職、休学して休養し、心的エネルギーを回復することが必要です。また、心理的葛藤に関してカウンセリングを受け混乱した情緒面の整理をすることや社会適応へ向けての心理的援助を求めることも大切です。そして、不安が続く場合は抗不安薬、うつ症状に対しては抗うつ薬の服用など、それぞれの状態像に応じて薬物療法が有効な場合もあります。生活上の工夫としては、適度の休養をとったり、気分転換にこころがけたり、日頃からストレスをためないようにすることが大切です。また、身近に適切な相談相手をもち一人でくよくよ考えないことや、人とのコミュニケーションにおいて、いかに自己実現するかというソーシャルスキルを身につけることも大切です。