長崎の心療内科 もとやま心のクリニック コラム「LOUNGE-5月号」あるがまま(森田療法)について

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コラム「LOUNGE-5月号」あるがまま(森田療法)について

(2018年5月7日掲載)

 森田療法は神経症に対する治療法の1つで、主に不安を和らげるための治療法になります。神経症というのは昔に使われていた病名ですが、これは現在ではパニック障害や社交不安障害、全般性不安障害、恐怖症といった不安障害や強迫性障害などの疾患が該当します。また性格的に不安を強く感じやすい方(心配性や神経質、完璧主義の方など)にも効果が期待できます森田療法はどのような方に向いている治療法なのでしょうか。疾患としては、・神経症(パニック障害、社交不安障害、全般性不安障害、種々の恐怖症)・強迫性障害・自律神経失調症、心身症といった方に有用です。性格傾向としては、・心配性・神経質・完璧主義・こだわりが強いという方に向いています。森田氏は、神経症を発症しやすい性格傾向を「ヒポコンドリー性基調」と呼んでいます。ギリシア語でヒポというのは「下」という意味で、コンドルというのは「胸のあたりの肋骨」という意味です。ヒポコンドリーというのは胸の下(心窩部)という意味になります。不安が強まると胸の下あたりが苦しくなる感覚に襲われることがありませんか?このような状態になりやすい方を森田氏はヒポコンドリー性基調と呼んだのです。これは上記のような心配性、神経質、完璧主義、こだわりの強い性格の方が当てはまります。病気にまでは至っていなかったとしても、上記のように不安を溜め込みやすい性格傾向を持っている方にも森田療法は有効です。

 では、森田療法はどのような方法で不安を和らげていくのでしょうか。それを知るためには、まずは不安がどのような原因で生まれてきて私たちを苦しめるのかを考えてみましょう。森田療法では、不安が何故生じるのかというと、それは「より良く生きたい」という気持ちがあるからだと考えます。例えば社交不安障害や対人恐怖症の方では、人前で不安が高まり過ぎてしまって動悸がひどくなったり、めまいがしたり、頭が真っ白になってしまったりといった症状が出てしまいます。本人はこのような症状によって非常に苦しみ、ひどい場合では人前に一切出れなくなってしまう事もあります。では、なぜこのような症状が生じてしまうのでしょうか。それは「他者からの評価に対する恐れ」が不安を生み出していると考えられています。一見すると「人前」という状況に不安を感じているようにも見えますが、その理由をより深く見ていくと、「周囲の人から変だと思われたらどうしよう」「大勢の人がいる前で恥をかきたくない」という「他者からの評価に対する恐れ」の気持ちが過度に強まっており、その結果として不安が生み出されているのです。つまり逆に考えれば、不安が強い人というのは「人から良く見られたい」「人から良い評価を受けたい」という欲望が人一倍強いのだとも言えます。このような強い欲望があるからこそ、強く他者を意識してしまい不安が生み出されてしまうのです。そして、このような「より良く生きたい」という気持ちを森田療法では「生の欲望」と呼びます。不安が強い方というのは、一見すると前向きな気持ちが低いようにも見えてしまいますが、その根本には「より良く生きたい」という前向きな「生の欲望」が人一倍あるのです。

 不安が強い方というのは、「より良く生きたい」という生の欲望が人一倍強い傾向があります。これは良いことです。「よりよく生きたい」「人から良い評価を受けたい」という気持ちは、集団生活・社会生活を円滑に営んでいく上でとても大切な考え方です。しかしこの欲望が過剰になってしまうと、時として生活に支障が生じてしまう事もあります。不安が強い方というのは、性格傾向として、・完璧主義・こだわりが強い・自分に厳しいという方が多くいらっしゃいます。このような方は生の欲望から、よりよく生きるために自分への理想を高く掲げすぎてしまい、それが苦しみを生み出してしまうことがあるのです。当たり前ですが、人は完璧にはなれません。しかしこのような方々は、完璧な自分を目標としてしまいます。「自分はこうでなければいけない(かくあるべし)」という現実的には困難な目標にとらわれてしまい、それからはずれる自分を許せなくなってしまいます。すると、理想の自分と現実の自分の間に大きな差が生まれてしまい、不安を生み出してしまうのです。例えば、「自分は人前で堂々と大きな声で発表できなければならない」という目標を持ってしまうと、人前で緊張してどもってしまったり震えてしまう自分は許せない自分になってしまいます。しかし実際は、人前で緊張するのは人として当たり前の現象です。人前で全く緊張しない人などいないでしょう。人前で全く緊張しない事などは不可能なのに、全く緊張しない完璧な自分を求めてしまうと、これはおかしなことになります。現実の自分を受け入れられなくなります。人前で緊張するという当たり前の現象が生じているだけなのに、そんな自分を「弱い人間だ」「恥ずかしいやつだ」と考えてしまい、人前に出ることに対して過度に不安になってしまい、人前を避けるようになってしまうのです。

 一般的に「病気」というのは身体にとって「異物」です。そのため病気の治療というのは、その異物を除去することが目的となります。例えば肺炎という病気は、私たちの体内に細菌といった「異物」が侵入することで発症します。肺炎を治療は抗生剤などを使って細菌を除去することになります。これと同じように考えると、神経症(不安障害)という病気は、私たちのこころに「不安」という異物が発生するために生じているという事になります。抗うつ剤や抗不安薬は、この異物である不安を除去するために投与されます。しかし森田療法では、「不安」という感情は正常な自分の中から生じているものであり、異物ではないと考えます。誰だって生きていれば不安を感じることはあり、その不安の全てが病気なわけではありません。神経症(不安障害)における不安も、この正常内の不安と連続しているものなのです。その不安も私たちの中から生まれたものであり異物ではないのです。異物ではなくて自分の一部なのだから、除去しようという発想がそもそも間違っていると考えるわけです。不安という感情は異物ではないため、そもそも完全に除去することは不可能だという事にまずは気付く必要があります。不安を無理矢理消すことは出来ません。となればすべきことは不安を消すことに必死になるのではなく、その不安は除去できるものではないと「受け入れる」ことです。

 森田療法でもっとも大切な考え方は、「あるがまま」というものです。神経症(不安障害)の方は、ある行動をしようとしたときに、不安が生まれてしまい行動が出来なくなってしまいます。例えばパニック障害では、「電車に乗りたい」と行動しようとしても、「パニック発作が起こったらどうしよう」という不安が生まれ、電車を避けてしまいます。社交不安障害では、「人と会話したい」と行動しようとしても、「赤面してしまったらどうしよう」といった不安が生まれ、人を避けてしまいます。この時、実は2つの気持ちがぶつかりあっています。・「電車に乗りたい」「人と会話したい」という目的に向かいたい気持ち・「パニック発作が起こったらどうしよう」「赤面してしまったらどうしよう」という不安な気持ちです。このうち、前者は「より良く生きたい」という生の欲望です。そして後者はそこから生まれてしまった不安になります。正常内の不安では、目的に向かいたい気持ちが勝つために行動することが出来ます。しかし神経症(不安障害)の方では不安が勝ってしまう事で、本来であればしたい行動が出来なくなってしまうのです。この状態を打破するためには、不安を消せばいいことが分かります。しかし不安というのは消そうとすればするほどむしろ強まるという精神相互作用があります。「人前で緊張しないようにしよう」と思えば思うほど、かえって意識してしまい緊張が高まってしまうのです。では不安にどう対処すればいいのでしょうか。不安には精神相互作用という特徴がある以上、そこに注意を向けるのはかえって逆効果です。そのため森田療法では、不安な気持ちを敢えて消そうとしません。不安な気持ちはそのままにしておきます。これを「あるがまま」と呼びます。不安な気持ちを「あるがまま」に置いておき、目的本位の行動(目的に向かう行動)にのみ焦点を当てていくのです。結果としてそれが不安を悪化させず、軽減させる一番の近道になるのです。

(せせらぎメンタルクリニックサイトより引用)

―待合室で読める本から―

「Dr.クロワッサン 自律神経が整えば健康になる (マガジンハウスムック)」(マガジンハウス)
自律神経のバランスが崩れることで、体にはさまざまな不調が起こります。自律神経が乱れる要因について、5人の異なる専門分野の医師から、自律神経を整える方法を伝授されます。
「新しいことを始めたい! 私が変わる! 新習慣 (e-MOOK)」(宝島社)
スキルアップ、美容・ダイエット、引き寄せ、片付け、趣味、貯金など現代女性の関心事がこの一冊に詰め込まれています。新しいことを始めたい女性必読の一冊です。
「毎日がもっと充実! 朝と夜の新習慣 (日経WOMAN別冊)」(日経BP社)
女性の朝と夜の過ごし方で自分を磨く“すきま時間"活用術です。上手な時間の作り方など、5分のすきま時間でできること100が役に立ちます。
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