長崎の心療内科 もとやま心のクリニック コラム「LOUNGE-5月号」サイコエデュケーション(心理教育)とは

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コラム「LOUNGE-5月号」サイコエデュケーション(心理教育)とは

(2013年05月09日掲載)
 うつ病および不安障害の治療では、薬物療法のみが優先されるべきではありません。まず、病気について正しく理解し、その病気を受け入れてもらうことが必要です。患者さんご自身のみならず、職場や家族にも適切な理解が必要です。なぜ薬物療法を並行させるのかという意味を理解するとともに、薬剤については効果の発現に時間がかかることも知ってもらわなければなりません。あるパニック症状を伴う広場恐怖症の方ですが、外出しようとすると強い不安が生じ、数時間も準備しなければなりませんでした。食事も、これから外出しなくてもよいとわかっている時以外は摂ることができず、大変不自由な生活です。しかもこのようなことは強い恥の感情を伴いますので、家族や職場の人には素直に話すことができず、数年間もやもやした気持ちのままで過ごされていました。またうつ状態に陥ると、仕事の能率が落ちて、朝からの出社がとてもきつく休みを取りたいのに、休むと会社に迷惑をかけるので言い出せないと八方塞がりになります。
 そこでまず、その方の病状と療養における過ごし方について詳しい説明が必要になります。たとえばうつ病の場合、発病後しばらくは狭義の心理療法的な関わりは行わず、話したり、考えたりすることが大変なうつ病の極期には「ゆっくりとしてください」とアドバイスすることがあります。この時期には先述したようにこころの休養をゆっくりとることが優先され、十分な休養を取るために薬剤の利用も必要だということです。ところが、休養を取ることへの罪悪感を伴い、自宅でどのように過ごしたらよいのか戸惑いも多いのです。療養中に知っておきたいこととして、1.気分障害や不安障害には脳に生物学的変化が生じていること。2.生育状況や家庭環境は病気の原因ではないこと。3.多くの場合、再発する可能性を持っていること。4.経過に個人差があること。5.再発予防のために寛解後も薬物療法が有効であること。6.家族(職場など含む)の理解が再発と関係すること、などが挙げられます。これらのことについて、治療当初から知識として理解しておくことが、病気への不安を取り除き、その後の治療を良好にする秘訣です。
 専門職にとっては常識的なことであっても、家族にとっては「病気とはわかっているがつい」批判的な態度をとる人、患者が「いつになったら」、「どこまで」良くなるのかを性急に知ろうとする人、「本当に今の治療でいいのか」という不安がぬぐえない人など、患者と病気を区別することが困難であったり、治療につきまとう不確実性に耐えられない人がいます。そのような不安を取り除くことが心理教育において行われることなのです。当クリニックでは、うつ病や不安障害という病気の理解を助け、患者さんのみではなく職場や家族が混乱することがないよう、どのような経過をたどることが予想されるのか、仕事を継続してよいのか、療養するのにどのようなことに注意すればよいのかなどについて、主治医および臨床心理士との間で話題にします。治療中盤になると、主としてストレスになっていた事態を振り返り、自らにとって何がつらかったのか、また、その対処法や受け止め方について見直していきます。そして自らの性格特徴や考え方、とらえ方の特性についても見つめ直し、微調整していくことも必要です。
 ちなみに、近年メディアでもしばしば取り上げられている認知行動療法は、認知のあり方を変えることにより、抑うつ感や不安感をやわらげようとする心理療法です。活動記録票や自動思考記録表などを自らで作成し、認知面、行動面、対人交流面についての自分のクセについて修正していくよう、援助していきます。また、支持的精神療法では、うつ病や不安障害の感情や考えに対する受容と支持を通して、心理的な安定を得ることができるよう援助していく心理療法です。その方にあった治療法を模索していくことが肝要です。

―待合室で読める本から―

「職場のメンタルヘルスで困った時に読む本―心療内科医が贈る完全マニュアル」(保健同人社) 伊藤克人 著 
心身の不調とはどんなものか、変化に気づくポイントとは何か、気づいたらどうすればよいのか、復職に向けてのサポートの方法など、職場のメンタルヘルスケアを行うために知っておきたい知識を事例やチェックシートとともにわかりやすく解説しています。
「入門 うつ病のことがよくわかる本 (健康ライブラリー イラスト版)」(講談社) 野村総一郎 著
うつ病について、イラスト付きで症状のことや薬のこと、認知療法のこと、家族のサポートの仕方などがわかりやすくまとめてある入門書です。典型的なうつ病から気分変調症や非定型うつ病まで、原因、診断、症状、治療法を初歩から丁寧に図解しています。
「職場のうつ ―対策実践マニュアル―」(星和書店) 松原六郎 他著
“うつ病とは心の風邪である”という言葉はすでに過去のものとなり、自殺者が増え、休職者が相次ぎ、復職してもすぐに再発するケースが多いという現状から、職場におけるメンタルヘルス対策が急務となっています。本書では、適切な関わりをするポイント、連携体制づくり、復職トレーニング、うつ病予防などについて、図表や文書の作成例を多用して、わかりやすく解説しています。
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