長崎の心療内科 もとやま心のクリニック コラム「LOUNGE-8月号」うつ病を繰り返す―双極U型障害とは

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コラム「LOUNGE-8月号」―うつ病を繰り返す―双極U型障害とは―

(2012年8月6日掲載)
 うつ状態に加え軽躁状態が起こる病態を「双極U型障害」といいます。一般に躁状態というと、寝る間を惜しんで仕事や勉強に励み大変エネルギッシュな状態で、一見生産効率が良いのですが、夜中も電話をかけまくったり、多額の借金を作ったりなど他者を巻き込み、次第に生活が破たんしてしまいます。軽躁状態はこれとは異なり、他者への迷惑行為がなく、いつもに比べて元気が良いという印象を与えるにとどまり、本人は気分爽快であるので気分の異常とは気づきにくいのが特徴です。うつ状態は何もやる気がなく鬱々とした気分が持続する、いわゆるうつ病に近い症状を呈します。疲れやすく仕事や勉強が捗らなくなり、本人にとっても具合の悪い状態ですので、その時点で受診されることが多いようです。
 多くの場合、問診においては軽躁状態についての自覚がなく、精神科医に適切な情報が伝わらなかった場合には、いわゆるうつ病として見立てられ抗うつ剤の処方がなされます。本来躁うつ病の人がうつ状態において抗うつ剤を服用し続けると、アクチベーションシンドロームと呼ばれる、焦燥感が強まり情緒的にも不安定な状態が出現することがあります。このように抗うつ剤の服用により症状の悪化がみられる場合は、診断を見直す必要があります。躁状態の期間は一般的にうつ状態より短いので気づきにくいのです。双極U型の場合はなおさらでしょう。双極性障害、特にU型はうつ病と見分けるのが大変難しい病態といえます。
 適切な見立てがなされると、十分な病気理解のもとに薬物治療を行います。しかし、薬を飲まなくても気分が安定し問題なく社会生活が送れる時期が長いので、状態が安定すると治療から離れる方が多くみられます。双極性障害はうつ病と異なり、明確なストレス因などの関与がなくても病相の再燃をきたします。これをそのままにしておくと、躁とうつのサイクルが短くなります。そうなると次第に社会生活を送るうえで支障をきたすようになってくるのです。ですから、根気よく予防的な視点から服薬治療を続けていくことが勧められます。自らの気分の状態を把握するうえでも定期的な受診は必要でしょうし、生活リズムを整えておくことも再燃を防ぎます。
 双極U型障害では、うつ状態の場合が多いのですが、 基本的に双極T型障害と同じ感情安定剤を用いて治療します。炭酸リチウムや抗けいれん薬のカルバマゼピン、バルプロ酸が用いられます。うつ状態が深刻な場合は、抗うつ剤を用いることはありますが、あくまで一時的なものです。また、双極U型障害には、抗うつ剤が効かない方も多くみられます。3剤以上の抗うつ剤の効果がない場合には、双極U型障害を疑うことも肝要です。うつ病を繰り返す方、抗うつ剤が効かない方は、双極U型障害の可能性があります。

―待合室で読める本から―

「うつ病新時代―双極U型障害という病 」(勉誠出版) 内海健著
精神病理学的視点から、うつ病の歴史、軽躁状態の持つ意味に触れ、多くの臨床事例を元に双極U型を始めとする気分障害を真正面からとらえ直しています。
「かくれ躁うつ病が増えている―なかなか治らない心の病気」(法研) 岩橋和彦他著
難治性うつ病の多くに躁うつ病の可能性があり、不運にも発病してしまったとき、患者さん自身やその家族がこの病について知識を得て、病気と共存して生きていく糧となる内容になっています。
「躁うつ病を生きる―わたしはこの残酷で魅惑的な病気を愛せるか?」(新曜社) ケイ・レッドフィールドジャミソン著
気分障害の啓蒙書は多くありますが、生物学的視点と心理社会的視点を維持することが肝要です。本書はバランスのとれた視点から書かれた躁うつ病の体験談であり、味わい深い内容になっています。
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