長崎の心療内科 もとやま心のクリニック コラム「LOUNGE-10月号」人間関係の持ち方

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コラム「LOUNGE-10月号」人間関係の持ち方

(2018年10月1日掲載)

 社会で生きていく上で、人と関わることは避けられないものです。人付き合いが苦手、他人の視線に敏感、強い緊張から人とうまく話せないなど、人間関係を築くことが苦手で、孤独感を持たれている方が一定数います。人はどのようにして他者との関係を築いていくのでしょうか。今回は青年期の対人関係を中心に話をしていきたいと思います。人は生まれてから最初に関わる養育者との情緒的な結びつきを経て、「この人がいれば安心できる」といった信頼感情を支えに、親子という二者関係に留まらず、信頼の対象を他者へ広げていけるようになります。小さい子どもは一人遊びから集団遊びへと遊びのパターンやレパートリーを増やし、遊びを通して他者との関係を築き、社会性を獲得していきます。青年期に入ると、同世代だけでの閉じた友人関係を好むようになります。青年心理学の分野では、この青年期の時期に同性との深い友情が育てられるか否かが、心の成長を大きく左右する要因になると考えられています。そして青年期に得た「友人パターン」は、成人後にどのような社会的対人関係を結ぶ人になるか、ということと大きく関連します。

 現代青年に特有な対人関係については、昔から心理学で研究されてきました。1980年代なかば以降は、深い人間関係を避けたり、低い評価を受けないように警戒したり、互いに傷つけないように気を使って、表層的に円満な関係で済ませようとするといった指摘がなされるようになってきました。発達心理学者のエリクソンは、本来青年期のことを「疾風怒濤の時代」と呼び、命がけで悩んだり葛藤したりする時期であると指摘していましたが、現在の日本の青年にはそのような情熱が希薄なっているようだと言われています。そこからわかるように、人間関係の形は時代に影響しているようです。青年期の対人関係を研究している岡田努は2007年に、現代青年の対人関係について6つの特徴を挙げています。@関係が希薄:実際以上に明るく振る舞うが、深刻な話題を避ける、A群れ志向的:友人が多く、笑いをとる技能があるということが最も評価される、Bやさしさ:相手への思いやりよりも、スムーズにその場をしのぐ技術が重視される、C葛藤を避ける:できるだけ衝突を避けるような、迎合しあう話し方をする、D無関心:身近な集団に受容されることだけを考え、外部の他者には気を回さない、Eふれあい恐怖:学校行事など、人間関係が深化するような場面を避ける。ただし、この傾向がすべての若者にみられるわけではないことも指摘されています。

 青年期になると、人は「自分のことをわかってくれるかどうか?」ということが気になってきます。子どものころは親に色々と相談をする傾向にありますが、相談をしているうちに、親が自分のことを完全にはわかってくれないことに気づき始めます。すると今度は、同世代の友人に心を自己開示し、強く影響を及ぼしあい、ときに相互依存的になる時期があります。ところがその友人も自分が期待するほどには自分のことを深く理解してくれないことを感じるようになります。このような友人関係の中における落胆や喜びを経験する中で、「人間はお互いにすべてをわかりあえるわけではない」ということに気づいていきます。そのことに気づき始めた青年の中には、どうせ分かり合えないのだから人と関わるのをやめてしまおうと引きこもってしまう人もいます。重要なのは、「お互いにすべてのことを分かり合うことはできないけれど、分かり合おうと努力することはできる」という考え方ができるようになること、突き詰めれば人は誰しも孤独な存在であることを実感した上での付き合いができるようになってはじめて、人間関係が少しずつ発展するプロセスを楽しむことができようになります。

(心理Aya.T 記)

―待合室で読める本から―

「気にしすぎ人間へ(クヨクヨすることが成長のもとになる)」(青春出版社) 長沼 睦雄 著
小さなことを気にしすぎてしまい、生きづらさを感じる人が、過剰な生きづらさを感じずに生きるための方法を、具体的な習慣やモノの考え方を取り上げながら伝えています。
「イヤなことがなかなか忘れられない人のための本―上手な気持ちの切り替え方」(青春出版社) 生月 誠 著
相手のちょっとした一言を何度も思い出してしまう、自分のうっかりした一言をふと思い出してしまう、うまくいかない自分がイヤになるなど、そのような悩みを抱える人に、上手に気持ちを切り替えるための技法を具体的に紹介しています。
「怒らない生き方 (ロング新書)」(ロングセラーズ) 植西 聰 著
毎日が運がいい日と思えば、ささいなことで怒ることもなく、どんなことがあっても、おだやかな笑顔で対処できるようになり、気持ちの浮き沈みもなく、安定した心で生きていけると述べています。
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