長崎の心療内科 もとやま心のクリニック コラム「LOUNGE-4月号」健康な心を持つための考え方

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コラム「LOUNGE-4月号」健康な心を持つための考え方

(2018年4月2日掲載)

 ようやく厳しい寒さが和らいできました。ホッとする反面、年度末に向けて一息つく暇もなくあわただしい日々を過ごされている人も多いかと思います。また、4月にかけて環境が大きく変わる人も増えると思います。そんなあわただしい日々の続くこの時期によく話題にあがるのは「ストレス」です。このコラム内でも何度か話題に出てきました。「忙しくてストレスが溜まるね」「ストレス解消に飲みに行こうか」など、日常生活の中でもストレスという言葉はよく出てくると思いますが、そもそもストレスとは具体的にどんな状態を表すか、ご存じでしょうか。「ストレス」という言葉は、心療内科・精神科と深く関わるものであり、多くの精神疾患の発症の一因にストレスが挙がります。近年のメディアでも度々ストレスについて話題になっているので、ストレスという言葉をきくとネガティブイメージがわくと思いますが、必ずしも私たちにとって悪いもの、必要のないものだとは言い切れない、そんな話を今回はしてみたいと思います。

 元々、ストレスとは工学の世界の用語だったそうです。ある物体に力を加えて形を変形させようとすると、その物体には元の形に戻ろうとする力が生じます。これは応力(ストレス)と呼ばれ、それをヒトに対して用いるようになったのはハンス・セリエという学者が最初だといわれています。セリエは、動物に様々な不快刺激を加えると、それに反応して生じる症状があることに気づきました。刺激に対して起こる反応が工学のストレスと似ていたため、同じようにストレスという言葉をヒトに用いるようになりました。私たちは普段、不快な刺激のことをストレスと呼ぶ傾向にありますが、正確には不快な刺激によって生じる反応(症状)が「ストレス」なのです。そして不快な刺激のことを「ストレス要因(ストレッサー)」と呼んで専門家は区別しています。ストレス要因とは具体的にいうと、騒音、悪口、嫌がらせ、人間関係、仕事内容などのことを言い、ストレスとは、イライラしたり、血圧が上がったり、胃がキリキリするといった症状を指します。

 さきほど説明したように、ストレスとは不快な刺激によって生じる心身の反応のことを言います。不快な刺激を受けると、私たちの身体には非特異的な反応が生じます。まず、@コルチゾールなどのストレスホルモンが分泌されること、A自律神経のうち交感神経が優位になることです。いずれも不快な刺激と戦うために生じる変化で、脈が速くなったり、瞳孔が開いたり、血圧が上がるなど、リラックスモードとは真逆の反応が生じます。「この不快な刺激に勝たなければ!」という反応が身体に生じるのです。例えば、仕事で失敗できないとき、ここ1番の大切な時に、このような反応(ストレス)が生じてくれることで私たちは乗りきることができます。適度な緊張感の中で高い集中力を発揮することができるのも、このストレスがあるからといえそうです。そう考えてみると、ストレスは一概に悪いものではなく、私たちが成長、向上するためには必要なものだといえるかもしれません。

 とはいっても、このストレスの度が過ぎるとかえって心身を痛めることになります。何事も過度は良くありません。過度なストレスが続くと、眠れなくなったり、疲労がどんどんたまって心身が傷ついていきます。生きていくうえでストレス要因やストレスを完全に消すことはできません。自分の身体の状態をよく把握して、ストレスとうまく付き合っていくことが大切です。

(心理Aya.T 記)

―待合室で読める本から―

「『空気が読めない』という病」  星野仁彦著  KKベストセラーズ
本書では、「隠された・見つけられにくい病」を、性格や個性であるとみなされがちだったさまざまな症状から探り、その治療法と周囲のサポートまでを広く紹介しています。数多くの実例・エピソードなど、読みどころもたっぷりあり、「隠れた見えない障害」といわれる発達障害を知るうえでの、最適の一冊といえます。
「『ゆっくり力』でいい人生をおくる」  斎藤茂太著  新講社
「ゆっくり生きる」とは、自分の人生をていねいに、大切に生きることにつながります。そこになんともいえない豊かなものを感じるという著者。明るい、楽しい人生を後押しする、「ゆっくり力」を発揮した好エッセイ88本が掲載されています。
「双極性障害とともに生きる」  加藤伸輔著  星和書店
双極性障がいと診断されるまでに13年を要した著者が自身の体験をもとに、その症状ならびに確定診断されるまでの経緯、具体的な治療、双極性障がいと上手につき合っていくコツ、そして同じ障がいをもつ当事者へのインタビューなどがまとめられています。
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